婚前契約とは?日仏カップルのための結婚手続きを徹底ガイド
フランス人と日本人のカップルが結婚を考える際、手続きの流れや必要書類について理解することは非常に重要です。日本とフランスの両国で法的に婚姻を成立させるためには、双方の国で適切な手続きを踏む必要があります。
◯日本で先に結婚手続きを行う場合
この方法では、日本の市区町村役場で婚姻届を提出し、その後フランス側に報告する流れとなります。当事務所の記事を読んでくださるということは日本での生活を希望されると思いますので、ほとんどこちらの手続きになります。
ステップ1:フランス人配偶者の婚姻要件具備証明書(Certificat de Capacité à Mariage)の取得
フランス人の方は、在日フランス大使館で婚姻要件具備証明書(CCAM)を取得する必要があります。この証明書は、フランス人が法的に結婚可能であること(結婚可能な年齢か、重婚をしていないかなど)を証明するものです。取得には以下の書類が必要です:
- フランス人の出生証明書(発行から3か月以内のもの)
- フランス人のパスポートのコピー
- 日本人のパスポートのコピー
- 日本人の戸籍謄本(外務省でのアポスティーユ認証と法廷翻訳でのフランス語訳が必要)
- 質問票(個人用および共通用)
これらの書類をフランス大使館に郵送し、約4~6週間後にCCAMが発行されます。
ステップ2:日本の市区町村役場での婚姻届提出
CCAMを取得後、日本の市区町村役場で婚姻届を提出します。主な必要書類は以下の通りです:
- 婚姻届(証人2名の署名が必要)
- フランス人の婚姻要件具備証明書とその日本語訳
- フランス人のパスポート
- 日本人の身分証明書(戸籍謄本は原則不要となりました)
提出書類は自治体により若干違ったりしますので、事前にご自身のお住まいの自治体にご確認ください。提出後、婚姻届受理証明書を取得します。
ステップ3:フランス大使館への報告的届出
日本での婚姻が成立した後、在日フランス大使館に報告的届出を行います。必要書類は以下の通りです:
- 婚姻届記載事項証明書(外務省でのアポスティーユ認証とフランス語訳が必要)
- フランスの戸籍台帳への登録申請書
これらを提出することで、フランスの戸籍にも婚姻が登録されます。
その後、結婚証明書(COPIE INTEGRALE D’ACTE DE MARIAGE)と家族手帳(Livret de Famille)を受領できるようになります。日本で暮らす場合は配偶者等のビザ申請に必要な書類となります。
※大切な婚前契約については記事の後半にあります。
◯フランスで先に結婚手続きを行う場合
この方法では、フランスの市役所で婚姻手続きを行い、その後日本側に報告します。
ステップ1:日本人の婚姻要件具備証明書等の取得
日本人の方は、在フランス日本大使館で婚姻要件具備証明書・出生証明書・慣習証明書を取得します。必要書類は以下の通りです:
- 戸籍謄本(アポスティーユ付き)
- パスポートのコピー
これらを提出し、証明書を取得します。
ステップ2:フランスの市役所での婚姻手続き
フランスの市役所に必要書類を提出し、婚姻手続きを行います。必要書類は以下の通りです:
- 日本人の婚姻要件具備証明書とそのフランス語訳
- 日本人の出生証明書とそのフランス語訳
- フランス人の出生証明書
- その他、市役所が指定する書類
初婚・再婚によっても必要書類は異なりますので、詳しくはフランスでの婚姻予定の役所に問い合わせて下さい。手続き後、フランスの戸籍に婚姻が登録されます。
ステップ3:日本への婚姻報告
フランスでの婚姻成立後、3か月以内に在フランス日本大使館または日本の本籍地の役所に報告的婚姻届を提出し、日本の戸籍にも婚姻を登録します。
※フランスの婚前契約(Contrat de mariage)について
フランスでは、結婚前に婚前契約を結ぶことが一般的です。この契約は、結婚後の財産の管理や分配方法を定めるもので、将来的なトラブルを避けるために有効です。婚前契約を希望する場合は、公証人(Notaire)を通じて契約を締結し、結婚手続きの際に市役所に提出する必要があります。
◯日本人の配偶者等ビザの取得について
フランス人配偶者が日本で長期滞在するためには、「日本人の配偶者等」の在留資格を取得する必要があります。このビザを取得することで、日本での長期滞在や就労が可能になります。
別の記事で書いておりますのでそちらをご参照ください
◯フランスの婚前契約(Contrat de Mariage)と日本人の考え方の違い
フランスでは、結婚に際して 「婚前契約(Contrat de Mariage)」 を結ぶことが一般的です。これは、夫婦の財産の取り扱いについて明確に定める契約で、特に資産を持つカップルや、事業を経営する方々にとって重要視されています。
一方、日本では 「婚前契約」 という概念は一般的ではなく、多くのカップルが契約なしで結婚し、財産は「夫婦共有」の原則に基づいて管理されます。この違いを理解しておかないと、日仏カップルが結婚する際に考え方のギャップが生じることがあります。
フランスの婚前契約とは?
フランスでは、結婚する際に 「法定財産制(Régime Matrimonial)」 を選択する必要があります。大きく分けて以下のような種類があります。
- 共有財産制(Communauté réduite aux acquêts)【契約なしの場合:デフォルトはこれ】
- 結婚後に取得した財産は夫婦の共有となる。
- 結婚前の財産は個人のものとみなされる。
- 特に契約を結ばなければ、この制度が適用される。
- 完全分離財産制(Séparation de biens)【契約が必要】
- 結婚後に取得した財産も含め、すべての財産が夫婦それぞれの個人所有となる。
- 事業を経営する人や、資産を個別管理したい人に選ばれる。
- 共有財産拡大制(Communauté universelle)【契約が必要】
- 結婚前・結婚後を問わず、すべての財産を夫婦で共有する。
- 一般的ではないが、夫婦が強い財産的一体性を持ちたい場合に選ばれる。
- 参加財産制(Participation aux acquêts)【契約が必要】
- 結婚生活中は完全分離財産制のように別々に管理するが、離婚時や一方が亡くなった場合には、共有財産のように計算される。
重要ポイント:
- 婚前契約は「公証人(Notaire)」を通じて作成しなければならない。ただし日本での婚姻の場合は大使館・領事館が公証人の代わりをしてくれます。
- 契約がない場合、基本的に「共有財産制」が適用される。
- 契約の内容によっては、離婚時の財産分与に大きな影響を及ぼす。
日本人にとっての婚前契約のメリット・デメリット
日本では婚前契約が一般的ではないため、「結婚前に財産のことを決めるのは愛がない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、フランスではこれはごく普通のことであり、結婚後のトラブルを防ぐための 「予防策」 として考えられています。
メリット
財産トラブルを防げる
事業経営者や資産を持つ人にとって有利
離婚時の財産分与が明確になる
デメリット
✘ 日本人にとって馴染みがなく、感情的な抵抗を感じることがある
✘ 契約を公証人と作成するため、手続きが面倒
✘ 離婚時に契約の内容が想定と異なる結果を生むことも
日仏カップルが婚前契約を考えるべきケース
日本人の方がフランス人と結婚する場合、以下のようなケースでは 婚前契約を検討する価値 があります。
フランスに住む予定で、フランスの法律の影響を受ける場合
事業を経営している、または将来的に独立を考えている場合
相続財産や個人資産を守りたい場合
将来的に財産トラブルを避けたい場合
婚前契約を結ぶかどうかは カップルごとの価値観や状況による ため、一度 フランス人パートナーとじっくり話し合うことが大切 です。
◯婚前契約と日本人の配偶者等ビザの関係
婚前契約そのものは「日本人の配偶者等」ビザの取得には 直接的な影響を与えません。しかし、ビザ申請時には「夫婦の経済状況」や「安定した収入の有無」が審査のポイントとなるため、財産管理の方法として婚前契約の内容が間接的に影響する可能性はあります。
例えば:
- 夫婦の生活費をどちらが負担するのか
- 収入や財産が完全に分離される場合、フランス人配偶者が日本で経済的に自立できるのか
- 日本人配偶者の収入が低い場合、フランス人配偶者の財産が日本の入管にどう評価されるか
ポイント:
婚前契約を結ぶ場合は、ビザ申請時に影響を及ぼさないかどうかも慎重に考える 必要があります。
◯まとめ
日仏カップルの婚姻手続きは、文化や法律の違いがあり複雑になりがちです。婚前契約に関するアドバイスも含め、スムーズな手続きを進めるために、当事務所が 婚姻からビザ取得までをトータルサポート いたします。結婚手続きやビザ取得でお困りの方は、遠慮なくお気軽にご相談ください!
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