フランス人との結婚に婚前契約は必要?日本での効力と日仏の夫婦財産制度を解説
フランス人との結婚を予定している日本人の方から、「婚約者に婚前契約を提案されたのですが、日本でも必要なのでしょうか」というご相談を受けることがあります。
日本ではあまり馴染みのない婚前契約ですが、フランスでは夫婦の財産関係を考えるうえで重要な制度です。
結論からいうと、フランス人と結婚するからといって、婚前契約が必ず必要になるわけではありません。 ただし、日本とフランスでは夫婦の財産に関する法律が異なるため、結婚前に確認しておくことが大切です。
今回は、日本で生活する日仏カップルを中心に、婚前契約の基本、日本とフランスの制度の違い、フランスで作成した契約が日本でも有効なのかを解説します。
1.婚前契約とは?日本でも作成できる?
婚前契約とは、結婚する前に、夫婦の財産や金銭的な取り扱いについて合意しておく契約です。
例えば、次のような事項が考えられます。
- 結婚前から所有する預貯金や不動産の取り扱い
- 結婚後に取得する財産の所有・管理方法
- 夫婦それぞれが経営する事業の財産管理
- 生活費などの負担方法
「結婚前から離婚の準備をするの?」と感じる方もいるでしょう。しかし、婚前契約は必ずしも離婚を前提とするものではありません。
夫婦が財産について異なる認識を持ったまま結婚することを避けるための取り決めともいえます。
日本でも、民法第755条により「夫婦財産契約」という制度が認められています。
ただし、契約しなくても日本には法定の財産制度があります。そのため、日本人同士の結婚では婚前契約が一般的ではないのです。
2.日本では結婚後の財産は誰のものになる?
日本の民法第762条では、結婚前から所有していた財産や、結婚後に自分の名義で取得した財産は、原則としてその人自身の財産とされています。
これを「夫婦別産制」といいます。
例えば、結婚前に所有していたマンションが、結婚しただけで自動的に夫婦共有になるわけではありません。
ただし、ここで注意が必要です。
財産の所有名義と、離婚時の財産分与は別の問題です。
結婚後、夫婦が協力して形成した財産は、一方の名義であっても離婚時の財産分与の対象となる場合があります。
また、日本法に基づいて法定財産制と異なる夫婦財産契約を結ぶ場合、第三者などに契約内容を主張するには、婚姻届の提出前に登記する必要があります。
日本法では婚姻後の夫婦財産関係の変更にも制限があるため、婚前契約を検討するなら、結婚前の準備が重要です。
3.フランスの婚前契約は日本とどう違う?
フランスでは、夫婦の財産関係を定める制度を「régime matrimonial」と呼びます。
代表的な制度は次の4つです。
① 法定共有財産制(communauté réduite aux acquêts)
原則として、結婚後に取得した財産を夫婦共有とする制度です。フランス法が適用され、特別な契約がない場合の基本的な制度です。
② 財産分離制(séparation de biens)
夫婦それぞれが自分の財産を独立して所有・管理する制度です。
③ 全財産共有制(communauté universelle)
原則として、結婚前からの財産も含め、広く共有財産とする制度です。
④ 後得財産参加制(participation aux acquêts)
結婚中は財産を別々に管理し、婚姻終了時に財産の増加分を精算する制度です。
フランス法上、法定の制度とは異なる財産制度を婚姻契約で選ぶ際には、公証人(notaire)による契約作成が必要です。
ただし、フランス人と結婚すれば自動的にフランス法が適用されるわけではありません。
4.フランスで作成した婚前契約は日本でも有効?
日仏カップルにとって、最も重要な疑問の一つです。
フランスで適法に作成された婚前契約であっても、日本で無条件に同じ効力が認められるわけではありません。
日本では、国際結婚における夫婦の財産関係について、「法の適用に関する通則法」第26条が定めています。
夫婦が適用する法律を選択していない場合、原則として次の順番で判断します。
- 夫婦の国籍が同じなら、その国の法律
- 国籍が異なり、共通の常居所地があれば、その地の法律
- いずれにも該当しなければ、夫婦と最も密接な関係のある地の法律
例えば、日本人とフランス人が結婚し、二人とも日本を生活の本拠としている場合、日本法が適用されることが考えられます。
一方、同法は、一定の条件を満たす書面によって、夫婦が日本法やフランス法などを選択することも認めています。
つまり、「フランスで契約を作成したこと」と「フランス法が適用されること」は、必ずしも同じではありません。
さらに、フランス法が適用される場合でも、日本国内の財産や取引については、第三者との関係で日本法が問題となります。外国法に基づく夫婦財産契約を第三者に主張するために、日本での登記が必要となる場合もあります。
そのため、日本で暮らす予定の夫婦がフランスの婚前契約を作成する場合には、日本での効力も事前に確認しておくことが望ましいでしょう。
5.日本で暮らす日仏カップルに婚前契約は必要?
すべての日仏カップルに婚前契約が必要なわけではありません。
例えば、二人とも給与所得者で、日本に長く暮らす予定があり、特別な資産を所有していない場合は、日本の法定財産制度を理解するだけで足りることもあります。
一方、次のような方は婚前契約を検討する価値があります。
- 日本やフランスに不動産を所有している
- 会社経営や個人事業を行っている
- 多額の預貯金や相続財産がある
- 将来的にフランスへ移住する可能性がある
特に、日本とフランスの両国に財産を持つ場合や、将来生活する国が変わる可能性がある場合は注意が必要です。
日本とフランスでは、夫婦財産制に関する国際私法のルールも完全には一致しません。
結婚前に、どの国の法律を適用させるのが適切か、双方の専門家に確認することをお勧めします。
6.婚前契約と結婚手続き・配偶者ビザの関係は?
日本でフランス人と結婚する場合、通常、フランス側の婚姻要件具備証明書(CCAM)などを準備し、日本の市区町村役場に婚姻届を提出します。
その後、フランス側への婚姻登録(transcription)も必要になります。
これらは婚姻を成立・登録するための手続きであり、婚前契約とは別のものです。
また、フランス人配偶者が日本で暮らすために在留資格「日本人の配偶者等」を申請する場合、婚前契約の有無自体が通常の許可要件になるわけではありません。
入管では、婚姻の実態や日本での生活基盤などが審査されます。
7.よくある質問(FAQ)
Q.フランス人と結婚する場合、婚前契約は義務ですか?
いいえ。婚前契約は義務ではありません。ただし、夫婦の資産状況や将来の居住国によっては、作成を検討する意味があります。
Q.日本で結婚すれば、必ず日本法が適用されますか?
いいえ。婚姻届を提出した国だけで決まるわけではありません。夫婦の常居所地や、準拠法の選択などによって判断されます。
Q.日本で作った婚前契約はフランスでも有効ですか?
日本で作成したという理由だけで、フランスでの効力まで保証されるわけではありません。フランス側の国際私法や契約の方式に関する規定も確認する必要があります。
8.日仏カップルの結婚準備はIAFJ行政書士事務所へ
婚前契約は、結婚に対する不信感の表れではなく、異なる法律や文化の中で育った二人が、将来の財産関係について理解を深めるための方法でもあります。
大切なのは、フランスの制度をそのまま日本に持ち込むことではなく、日本でどの法律が適用されるのかを確認し、必要に応じて両国の制度を調整することです。
IAFJ行政書士事務所では、フランス人との国際結婚を予定する方に対し、日本国内での婚姻手続き、必要書類の準備、婚姻後の在留資格申請などをサポートしています。
婚前契約についても、日本で必要となる手続きや確認事項を整理し、専門的な法律判断やフランス法上の契約作成が必要な場合には、弁護士やフランスの公証人などとの連携を検討します。
「フランス人の婚約者から婚前契約を提案されたけれど、どうすればよいか分からない」
そんな方は、婚姻届を提出する前に、ぜひIAFJ行政書士事務所へご相談ください。


