「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」のビザで日本に暮らしていて、その配偶者と離婚や死別した際には「定住者」への変更ができる可能性(告示外定住)があることについては以前述べました。
もちろん確実に定住者への変更ができるわけではなく、失敗することもあります。入管は認められた事例・認められなかった事例をそれぞれいくつか例示しているので、今回は認められなかった事例について私見を述べたいと思います。あくまで私見です。
なお、申請者の国籍については記載がありません。
全体の表は以下のリンクよりご確認ください。
https://www.moj.go.jp/isa/content/930002823.pdf
1
・性別:男性
・日本での在留期間:約4年10ヶ月
・前配偶者:日本人(女性)
・前配偶者との婚姻期間:約3年
・死別・離婚の別:離婚
・前配偶者との間の実子の有無:日本人の実子
・事案の概要:詐欺及び傷害の罪により有罪判決/親権者は前配偶者
こちらの事例は婚姻期間が3年あり、子供もいるのに「特別な理由」があるように思えますが、それにも関わらず認められませんでした。原因は何より素行が悪すぎることです。たとえ隠していたとしても、申請人の犯罪歴の確認については、地方検察庁、少年院等に対する照会が行われます。告示定住の方には素行善良要件というのがありますし、詐欺・傷害で有罪判決まで受けているようでは、そう簡単には定住許可はもらえないでしょう。日本人の前配偶者に子供の親権もあるようですし、いいところがありません。
2
・性別:男性
・日本での在留期間:約4年1ヶ月
・前配偶者:永住者(女性)
・前配偶者との婚姻期間:約3年11ヶ月
・死別・離婚の別:事実上の破綻
・前配偶者との間の実子の有無:無
・事案の概要:単身で約1年9ヶ月にわたり本邦外(日本国外)で滞在
こちらは永住者との婚姻関係が事実上の破綻をした、というパターンです。婚姻期間は許可要件の概ね3年をクリアしていますが、婚姻期間内に単身で1年9ヵ月も日本を離れていたとなると、正常な婚姻関係・家庭生活が継続していたとは認められず、特別な事情を持って日本に滞在させる理由がないと考えられます。今回のような離婚定住の場合、離婚に至った経緯も重視されますので、申請理由書にはその辺りを詳細に説明する必要があります。
3
・性別:女性
・日本での在留期間:約4年1ヶ月
・前配偶者:日本人(男性)
・前配偶者との婚姻期間:約3年10ヶ月
・死別・離婚の別:死亡
・前配偶者との間の実子の有無:無
・事案の概要:単身で約1年6ヶ月にわたり本邦外で滞在/本邦滞在中も前配偶者と別居し、風俗店で稼働
死別での許可要件も、離婚時と同様に、その直前までに概ね3年以上の正常な婚姻関係が継続されていたと認められる必要があります。日本人の配偶者と死別とは可哀想ではありますが、こちらは風俗店で働いていたことが悪いというよりも、単にそもそもの婚姻について偽装結婚を疑われているのではないかと思います。2の事例と同じように、単身で日本から1年半も離れているようですし、日本にいる時も配偶者とは一緒に暮らさずに風俗店にいたとのこと。正常な家庭生活が送れていないようですので、入管の疑いを覆す正当な理由を説明できなければなりません。
4
・性別:女性
・日本での在留期間:約3年4ヶ月
・前配偶者:日本人(男性)
・前配偶者との婚姻期間:約1年11か月
・死別・離婚の別:離婚
・前配偶者との間の実子の有無:無
・事案の概要:前配偶者の家庭内暴力による被害を申し立てた2回目の離婚/初回の離婚時に前配偶者による家庭内暴力を受けていたとして保護を求めていたが、間もなく前配偶者と再婚/前配偶者との婚姻期間は離再婚を繰り返していた時期を含め約1年11ヶ月
同じ人と2回結婚して2回離婚しているという変わったパターンですね。1度目も2度目も同じような家庭内暴力が原因ということですが、なぜ1度目の離婚時に相手の暴力で保護を求めたのにまたその人と結婚しちゃったの?という感じです。基本的には入管に疑問を持たせてはダメです。その疑問を覆すだけの説得力のある説明が求められますが、そもそも婚姻期間も通算で2年弱ですし、定住者として在留するには説得力に欠けるというところでしょうか。
5
・性別:女性
・日本での在留期間:約4ヶ月
・前配偶者:日本人(男性)
・前配偶者との婚姻期間:約3ヶ月
・死別・離婚の別:離婚
・前配偶者との間の実子の有無:無
・事案の概要:前配偶者の家庭内暴力による被害を申し立てて申請/婚姻同居期間は3ヶ月未満
一般的には、配偶者によるD Vを受けていた場合は、申請が認められる可能性は高くなります。しかしながら、このケースでは在留期間も婚姻期間も共にとにかく短すぎます。まだ日本社会に定着しているとは思えず、結婚わずか3ヵ月で日本人夫からの暴力から逃げるように申し立てとは、なぜ結婚前にそういう人と分からなかったの?と思われてしまいそうです。結婚してすぐに豹変でしょうか。可哀想な面もありますが、この申請人に定住者の在留資格を与えるには時期尚早との判断でしょう。
6
・性別:女性
・日本での在留期間:約3年3ヶ月
・前配偶者:日本人(男性)
・前配偶者との婚姻期間:約2年1ヶ月
・死別・離婚の別:離婚
・前配偶者との間の実子の有無:無
・事案の概要:前配偶者の家庭内暴力による被害を申し立てて申請/日本語学校に通うとして配偶者と別居したが、風俗店に在籍していたことが確認されたもの/婚姻の実態があったといえるのは、約1年3ヵ月
基本的なことでありますが、在留許可申請の際に、絶対に入管に嘘をついてはいけません。もちろん誰に対しても嘘はいけません。さて、この事例では婚姻期間2年1ヵ月に対し、実際にその婚姻の実態は1年3ヵ月しかありません。概ね3年以上の婚姻期間を満たしていない上に、生活のためにそうするしかなかったのかもしれませんが、日本語学校に通うと嘘をついていたのはいただけません。これも偽装結婚を疑われても仕方ありません。
配偶者ビザから定住者への変更が失敗したからと言って、必ずしもすぐに本国に帰国しなくてはいけないとうわけでもありません。例えば仕事をしていれば技術・人文知識・国際業務に変更するということもあり得ると考えます。
一般的には配偶者からのD Vでの離婚だとか、子供の親権を持っているとかだと申請者に有利に働くことが多いように感じます。ただし、それもその他の条件を満たしていること前提です。
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